小話まとめ2 - 3/9

『線香花火』

 

「スカイアイ、花火しない?」
そうメビウス1に誘われ、庭に出て手持ち花火を始めた。
色とりどりの光が闇を照らす。大の大人が二人して鮮やかな花火に夢中になった。あっという間に、買ってきた花火は尽きてしまった。
「もう終わりか」
花火の入っていた袋を見て言う。
「ううん、まだあるよ」
「紐のような……なんだ、それは?」
「これは線香花火っていうんだ」
メビウス1は細い紐の束から一本を抜き出してスカイアイに渡した。彼に習って線香花火の先端に火をつける。
静かに、小さな小さな火花が散る。
赤い花が咲いているようにも見える。繊細で可憐で、どこか妖しい光。
二人して黙したまま、ただただ千変万化する赤い光を見つめる。
激しく輝いたかと思えば、静かに儚く消えていく花火。終焉には、先端に丸い火の塊がじりじりと燃えて、ふいに、ぽとりと地面に落ちた。
「終わっちゃった……」
メビウス1が寂しさを滲ませて呟く。美しいが、終わり方はあまりに呆気なく切ない。それなのに最後まで目をそらさずに見ていたいと思う。
刹那に鮮やかさを目に焼き付けて、呆気なく散る。それは戦闘機が闘い、空に砕ける様にも似て――。
スカイアイは頭に浮かんだ想像を首を振って霧散させた。
――縁起でもない。
「スカイアイ……どうかした?」
わずかな光を凝視していたせいか、辺りは漆黒の闇に包まれ、こちらを見ているはずのメビウス1の顔すらよく見えない。
「いや、なんでもないよ」
スカイアイは新たな線香花火を手に取って、灯ったロウソクに先端を近づけた。
今は光が恋しかった。

その後も、二人で顔を突き合わせて線香花火をした。
静かに、静かに。
「線香花火ってね、人生を表しているらしいよ」
スカイアイの心情などしらず、メビウス1は蘊蓄を披露する。
――人生か。
その言葉にひどく納得してしまう自分が嫌だった。