『バンドッグのお料理教室』
明るい日差しが差し込むキッチンにバンドッグの罵声が響く。
「だいたいお前は大雑把すぎる。自己流にせず、ちゃんとレシピを見ろと何度も言っているだろうが!」
「でも、あんた前に『食えれば何でもいい』って言ってただろ」
「『食えればいい』と『不味くてもいい』は違う。そんなこともわからんのか」
そんなに俺の料理、不味かったかな――とトリガーはしょんぼりした。
「あんたは何でそんなに料理が上手いんだ?」
「フン。レシピ通りに作っているだけだ。むしろ、なぜそんなに不味く作れるのかが疑問だな」
(おいおい……この男、世の料理下手な人全員を敵に回したぞ)
とはいえ、それをまったく恐れないのがこの男ではあるが。
バンドッグは玉ねぎをひとつ掴んだ。
「玉ねぎをくし切りにするのと、繊維を断ち切るように切るのとでは出来上がりの食感や甘さが変わってくる。調味料を入れる順番でも、味の浸透率が変わる」
「そんなことまで考えてんの……?」
塩を先に入れようが砂糖を先に入れようが一緒じゃないかと、つい思った。 それが顔に出ていたのか、バンドッグにギロリと睨まれる。
「料理の美味さとはそういったことの積み重ねだ。料理は物理であり化学だ。それを面倒だというなら一生不味いメシを作っていろ!」
そう言い放ち、キッチンを出ていこうとする。それを腕を掴んで必死に引き止めた。
「わ、わかったから、教えてくれよ。あんたの言う通りやるから……」
そうして隣でバンドッグに罵られながら作ったチャーハンはめちゃくちゃ美味しかった。パラパラにほぐれたライスに、玉ねぎの甘みが染み込んでる。
「うっま……!」と思わず口から出た。それを聞いたバンドッグはどこか満足そうな顔をする。
「なぁ、バンドッグ」
「……なんだ」
「左腕が治ったら、俺になんか作ってくれないか? 俺、あんたの料理が食べてみたくて仕方ないんだ」
バンドッグは「治ったらな」とボソリと答えた。

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